音楽業界ジャングルに潜む罠

今朝のニュースで、「モデルデビューできると言われ、撮影費として何十万も請求されたが、その後連絡が途絶えた」というクレームが取り上げられていた。

このようなブラック企業は日本にも多く存在するが、あまり大々的に社会問題になっているイメージはない。

イギリスでは、これらのブラックなトラップは、至る所に溢れている。

いつも日本とイギリスの音楽業界の比較を例えるときに、『きちんと敷かれたレール』(日本)と『野生動物が溢れるジャングル』(イギリス)と説明している。

イギリスの『ジャングル』感をさらに説明するために、今回は私が遭遇した『トラップ(罠)』をご紹介する。

『野生動物』が潜むジャングル

野生動物とは具体的に何なのか、それは、とっても単純。

『自分の利益を第一に考える』

『申し訳ない』とか『空気を読む』という発想は弱みになり、少しでもそんなそぶりを見せれば容赦なく騙される。日本の美徳が、イギリスでは恥と捉えられる部分も少なからずあると思う。4年間のロンドンでの大学生活、その後また2年イギリスで暮らしてみて、文化の違いは十分解っていたと思っていたが、何年経ってもまだまだ日本人らしさが出てしまう。むしろ時間が経つ程、日本人としての自覚が高くなるので、より日本人らしさを意識してしまうとも言える。

『トラップ(罠)』シリーズ

サバイバルゲームを想像してみてほしい。ジャングルの中、様々な落とし穴やトラップが仕掛けてある。イギリスの音楽業界というジャングルに仕掛けられる罠(詐欺とのグレーゾーン)を、ここでご紹介。

その1 ラジオ プロモーター

メールの一文から始まる。

『君の楽曲を聴いて気に入った、ラジオの宣伝をさせてくれ』

イギリスにはプラガーというラジオ宣伝専門の仕事があり、多くの実績を持つ個人プラガーや事務所もある。

自称プラガーというこの方からのメールに、詳細を教えてほしいと返信すると、宣伝プランのパワポが送られてきた。主要ラジオ局に宣伝してくれるという、内容だけ見れば理想的なプラン。しかし日本での自分の経験上、ラジオにアプローチしたところで(よっぽどのメジャーレーベルのプッシュがない限り)曲がオンエアされる保証はない。更には、プロモーション費用として800ポンド(十数万円)かかるという。一度スカイプで話を聞きたいとメールしたら、そこで連絡が途絶えた。なるほど、活動し始めのアーティストをターゲットにメールし、お金だけ先に振り込ませて何もしないとか、アプローチしたけどダメだったとか言い訳を言うのだろう。

その2 イベンター

タチの悪いライブイベンターの定番となっているのが、『ペイ・フォー・プレー』つまり、出演者側が売れなかったチケット分を払うという方式。

とあるイベンターからのSNS経由でのメールには、ロンドン中のライブハウスの日程が送られ、出演したいイベントが選べるという。

〇〇(そのイベンター名)scam(詐欺)で検索すると、『ロンドンライブ情報・ブラックリスト集』サイトなど次々と警告の書き込みが出てきた。

その3 プロモーション、マネジメント

これは個人的に遭遇したことはないが、よくあるパターンが『ソーシャルメディア・コンサル』。これは詐欺だとは言えないし、上手くやればフォロワーが増える可能性もある。

だが最近はどのSNSサイトも、ユーザーの場所、年齢層、趣味等、細かい分析レポートが分かる。個人でも観れるこの情報レポートを、いかにも『私たちプロが分析しました』のように提示してきて、広告費を勧め、その上コンサル料を取る…facebookなどに広告費を出し、少しフォロワーが増えたところで必ずしも直接集客などに繋がる訳ではないところが難しい部分なので、これはあくまで個人的に予算の余裕と費用対効果を信頼できるか、という問題になってくる。

もちろん信頼のおけるプロモーター、イベンター、マネジメントも多数存在する。一番大事なのは、相手の顔が見えるかどうか。

そして金銭面での約束事は必ず事前に書面で交わしておく事。

特に日本ではルーズになってしまいがちなこの項目。良い関係を築くためにも、どんな人とも「疑い」という先入観から始めるようにしている。

人種差別のお話

かなり久しぶりのブログながら、ヘビーなタイトル。

異国の地での人種差別はどうしても避けられないものだが、
どこまでを問題視するかは、実は日本人として曖昧だと思っている。

両方とも島国である日本とイギリスを、日本人である自分とイギリス人の旦那と移動していると、それぞれの国によって周りの態度がわかりやすいほど変わる。日本では、タクシーやレストランなど、旦那が頼んでも私に確認されるが、イギリスでは真逆のことが起きる。

イギリスも田舎になると日本と同じで、外国人が比較的珍しい場合もある。週末によくハイキングをするのだが、そこですれ違う人たちがイギリス人の旦那さんにのみ挨拶することが多い。これは差別なのか?あるいは普通にアジアン観光客だから英語話せないと思われているのか?
問題になるのはアジア人の差別的な言葉を言ってきたり、明らかに失礼な態度を取ったりする場合だが、そういったことは私はあまり体験したことがなかった。だがちょっと耳を疑ったこともある。イギリスではラジオに宣伝し、曲をかけてもらうように働きかける仕事をするプラガーという業種があるのだが、そのプラガーが、BBCのような大きなラジオにピッチングするにはイギリス人アーティストでないと難しいというのだ。むしろイギリスの音楽カルチャーは、異文化を取り入れてきたからこそ面白いものが生まれてきたと思っていたが、これにはがっかりした。もしかしたら、自国のアーティストのみをピックアップするというメディア(ラジオ)の企画なだけで、人種差別とは言えないのかもしれない。

イギリスも日本と同じ島国。その内輪ネタのかんじ、わからなくもないのだ。日本語で演歌を歌う外国人のように、共感できるエッセンスを入れて惹きつけることが大事だ。もしくは外国人ということを隠す?
とにかく差別の問題は、白黒はっきりしないからこそ複雑だ。そしてクロスカルチャーで成り立っていると思っていた音楽に関しても、そういった問題があるのだ。新たな音楽マーケットに挑戦するという意味では、もしかしたら一番ハードル高いところに来ちゃったのかもしれない。だからこそ挑戦し甲斐があるんだけど。

ちなみに先日サッカーW杯の日本戦をBBCで観ていて、解説者の発言にも疑問に思ったことがいくつかあった。日本のプレーに対して、

they’re playing their “little” football
→『小さな』サッカー??完全に見下してるよね?
It’s a land of giants for them
→『巨人の国に来た小人』。確かにベルギー人とは明らかに体格違うけど
They sacrificed themselves
→『身を削って』戦った
これでもいいけど、普通に頑張ったとかベスト尽くしたでもいいのでは?なんか鼻につくな〜

もともとイギリス英語の表現は、鼻につく皮肉が込められた言い回しが特徴だが、ストレートにバカにしていないながらも、曖昧な表現がきになる。差別のグレーゾーンをかすり続ける理由は、もやっとしたディスりに反抗しない、日本人の事なかれ主義精神と相まって、その曖昧さを増すばかり。そもそも日本人の中での『差別』に対するモラルや危機感も、かなり低い気がする。これもこれでまた別の、大きな社会問題だ。