ロンドン大学院生活まとめ

今月頭、卒論を提出し、1年間のロンドン大学院生活を終える事ができた。

10年ぶりに学生に戻り、18,19の時にもっとこうしていれば良かった!と思う教訓を十分に生かして思いっきり楽しんで勉強できた。『課題やらなきゃいけなくてめんどくさい』じゃなくて、『課題があるって何てありがたいんだろう』という精神で、全力で勉強した。では実際、大学院生活はどんな日常だったのか。

どんな授業?

単位は、日本の大学と同じ、必須科目と選択授業で構成される。一学期は、言語別のクラスに分かれる前に、どの言語にも共通する翻訳学の基礎や歴史を学ぶ。評価はほとんどが小論文で、実技試験は翻訳ソフトの試験(教科書やノート持ち込みokなので暗記はなし)、通訳したスピーチを録音し、その自己評価や分析を提出する課題もあった。二学期になると言語別に分かれ、科学技術や医学関係の翻訳の授業を取っていたので、論文の一部や説明書などを訳す課題が出された。これも、試験は決められた時間内での翻訳作業でスピードと正確さが採点され、期限が長めの課題では、どのようにリサーチをしたのか、その訳の結論に至ったのかを別途説明する。大学に通う頻度は週2〜3日という感じ。クラスの規模もバラバラなので、参加型の少人数のものもあれば、大勢の講義形式のものもあった。全体として、単位の半分は卒論。なので、半年間授業があり、もう半年は卒論に当てるというスケジュール構成だった。

学生達の様子は?

半数以上が中国語で、他はアラビア語、ロシア、フランス、ポーランド、ルーマニア、ギリシャ語など。9割が女子。日本人のフルタイムの学生は意外な事に私1人だけだった。全体的に思ったのは、翻訳という、言語間のコミュニケーションの手助けという科目だからか、思いやりがあって優しい雰囲気の人が多かった。特に中国人の女の子達はみんな可愛くて優しく、気を遣うポイントやマナーなど、日本人と似てるなと親近感が湧いた。授業中発言が多いのは、やはりイギリス人系。と言っても母国がイギリスの学生は1〜2割ほど。大半の中国人学生は日本人と似ていて、授業中は少しシャイな様子だった。正直、たった1年間のコースだったが、美大時代の同級生よりも、今後も仲良くしたいなと思える人たちに沢山出会えた、恵まれた出会いの機会になった。

印象的だった授業

一学期で印象的だったのは、通訳の歴史の授業で、先生が手話で授業を進めていた事。その場で手話の通訳の方を介して質問のやり取りなどをして、内容だけでなく現場でどのように通訳という過程がコミュニケーションに影響するのかを体験できた。ちなみに自由課題の小論文で長崎の鎖国時代の通詞(当時の通訳)を題材に書いたのだが、これがとても興味深かった。

また、緊急時通訳/翻訳の授業という選択授業も、貴重な発見のある授業だった。多言語コミュニティでの自然災害や大規模な事件発生時、どのように情報伝達するべきか。ここでも、日本の災害対策の優秀さは世界的に見てもクオリティが高いことを知った。しかし日本はトップダウン社会で、対策や法案ができても現場で生かされきれないという問題点もある。情報拡散や翻訳家同士の連携のためのソーシャルメディアの利用法なども、考えさせられるクラスだった。

印象的だった出来事

全然勉強とは関係ないが、中国人の学生さんたち(10個下)がみんな私の音楽を知ってくれていた事には驚いた。普通に一緒に授業を受けていた子が、『Rie fuの歌ipodに入れてた』と言ってくれたり。日本でも全然知名度低いのに、本当に嬉しびっくり。

実際の学校の様子は、こちらの映像で少しご紹介している。

 

海外を目指す人にオススメの英語勉強法

翻訳の勉強をしていてつくづく思うのは、言語はあくまでも記号であるということ。当たり前ながら、記号の裏側にある、何を伝えたいのか、どんな意味があるのか、という言語化できないコンセプトを掴むことが大事になってくる。

「海外を目指す」には大きく2つタイプがあると思う。
1つは、やりたいことを探すため。
2つめは、日本でやってきたことのステップアップとして。
どちらのタイプであれ、何かきっかけがあったはずだ。海外ドラマに憧れたり、洋楽が好きだったり、また日本でカメラマンや美容師をやっていたり。それらのパッションこそが、最高の英語の教材になる。
つまり、それらに関連した単語や英会話から勉強を始めること。例えば、シチュエーションのシミュレーションを作ってみて、ありうる会話文を作ってみるとか、自分の趣味や職業についての英文スピーチを作ってみるなど。また、日々の日記を英語で書くのも良い方法だ。「英語」だと思わず、あくまでも自分にとって大切なことを表現してみることが、”勉強”の堅苦しい壁を取り払う良い方法。

自分の場合、小学生の頃アメリカで2〜3年過ごし、帰国した1年後には英語力が半分以下に落ちていたことにショックを受けたことが、英語を独学で勉強し始めるきっかけになった。中学生の頃はティーンドラマや雑誌、洋楽が趣味になり、ドラマを観ながら知らない単語をメモしたりしていた。楽しみながら勉強していたが、その成果もあり高校生で英検1級に合格するまで英語力を上げることができた。ロンドンの大学に留学した当初は新たな壁にぶつかった。幼少期に馴染みのあったアメリカとは、文化が真逆のイギリス。コミュニケーションの取り方や基本的な生活に慣れるまでは、毎日のように日本の母に電話で愚痴っていたほどだ。
このように、言語は話せても海外生活の壁は沢山ある。それを乗り越えられる大きな力は、「やりたいことへの情熱」。

やりたいことを探すために海外に行きたいという方には、アメリカやオーストラリアなどをオススメする。逆にイギリスは、特定の分野を極めるには最高の環境。個人的に思うのは、三十代ぐらいでの渡英がちょうどいいということ。今のイギリス生活では、18歳の頃は分からなかった事への答えが、鮮明になってきている。

ちなみに、これは曲作りにも共通して言える。音楽もあくまでも記号で、何を表現したいのか、が一番大事。スタイルやサウンドにとらわれ過ぎると、大元にある大きなコンセプトを見失っていることもある。言語も音楽も、大事なのは核にある熱いもの。届け手の心そのものだ。

 

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Learning to Drive

ロンドン大学院生活、では実際にどんなことを勉強しているのか、自分のための復習がてら書いていきたいと思う。

翻訳科といっても、言語別の翻訳の課題があるのは医療翻訳の授業ぐらいで、他はどの言語であれ共通の翻訳・通訳理論と、翻訳メモリというコンピューター技術の使い方を学ぶ授業。

(翻訳メモリ(TM)とは、自分または他人が過去に行った翻訳をTMと呼ばれるデータベースに登録しておきリサイクルするツールである。TM には原文と訳文のペアが大量に蓄積されており、翻訳者はWordもしくはエディタなどで翻訳中に翻訳済みの文をTM に登録する操作と、TMを参照してリサイクルできる訳文を探す操作を交互に繰り返す。)

日本翻訳連盟ウェブサイトより引用

全自動の翻訳ではないが、自分が訳したものを記録してくれて、同じものが出てきたら指摘してくれるという翻訳のお助けツール。他にも選択授業でボイスオーバーや字幕などを付けるツールの使い方、ウェブサイトのローカライゼーションの授業など、実用的なことが学べる。

ここまでこのコースで学んだ、翻訳の勉強ってこんなことなんだ?ということ、またそこから気づいたことを書いてみたいと思う。

翻訳理論はイギリスらしく、ここまでやるかというぐらい深く掘り下げて長々と論じていく。たとえば…

  • 同言語間の訳(子供向けに簡単な言葉にするなど)
  • 翻訳者の意思をどのぐらい反映するか
  • 文化の違いでどうしても訳せない言葉の対処法
  • 文章に隠された権力の差をどう再現するか
  • しまいにはわざと『翻訳された文章』のように見せかけて本当はオリジナルの文章、というジャンルの専門分野もあるぐらいだ。

また通訳は翻訳とは違ってその場で瞬時的に行われるものなので、歴史や理論が異なってくる。世界で同時通訳が初めて公式に行われたのは第一次世界大戦後のドイツでの裁判で、二つの言語を話す人が仲介人になった歴史は古代からあるものの、世界規模で記録されている事例はまだ歴史が浅いという。翻訳や通訳が学問として本格的に研究されるようになったのも、20世紀になってからのことなのだ。

そしてここまでで気づいたことは…

  • 翻訳・通訳は実際に訳す作業が大事だと思っていたが、その前に大きな全体像を見ることが必要
  • バイリンガルの人はみんなできると思われがちだが、それは車を買ったら誰でも運転できるという発想と同じようなものかもしれない。路上に出る前に道路標識やルール、シチュエーションごとの対処法を学ぶことが必要。
  • そして何より、美しい日本語をもっと身につけたいと思った。
  • それは、英語が『内容の意味』重視なのに対して、日本語は同じことでも口調や文法の置き換え方によって捉え方が大きく変わってくるからだ。

予想以上の勉強量に疲弊しそうだが、この学べる機会を大事にしていきたいと思う。

 

Music and Interpreting

またもやブログ投稿の間が空いてしまった、、大学院生活に少し慣れてきたところで、また毎週の更新を再開したいと思います。

この1ヶ月の新たな生活は、この10数年間学生も会社員もしていなかった自分にとって新鮮なもので、眠っていた脳が覚醒されていくような感覚があった。自分が随分長い間『想像』で作り上げるもの(歌や絵画)だけに偏って頭を使っていたことが浮き彫りになるように、現実と自分の思考を照らし合わせてそれを具現化するリハビリが必要だと感じている。何のこっちゃという感じだが、例えば翻訳の課題で本文の意味を自分で勝手に解釈して変えていて、訳にミスがあったりという単純な話だ。

Thes past month has been a wake-up call for my brain, which has been asleep for more than a decade—I haven’t been in school nor in an office-working environment for so long (I’ve never worked in an office, for that matter). For a long time, I have predominantly been “creating” things in my head which has no correct answer, so a rehabilitation process is needed to get myself back reality and focus on aligning with the answers expected in reality…wtf am I saying, right? Well, as a simple example, in a translation task, I tend to “imagine” and alter the context of the original text, things like that. That’s suicidal for a translator.

そんな自分なりのフィルターをかけていると危険な部分もあるが、それでもやはり勉強や研究にクリエイティブな発想は大事だとつくづく思う。芸術と同じように科学でも、少し角度を変えて観てみることで大きな発見があるものだ。そんな発想を大事にするところが、独特な文学、芸術や学問を産み出してきたイギリスならではだなぁと思う。まだまだ勉強を始めたばかりなので偉そうなことは言えないが、感覚的に、この国は特定の分野の勉強をものすごく突き詰めて研究するにはピッタリな環境だと思う。18歳でイギリスに初めて留学した当初の自分は、その環境にはまだ未熟だった部分もあると感じている。イギリス留学は、一度社会人を経験してから勉強し直す場合が一番向いているのかもしれない。

There are dangers in filtering the reality with your own creativity, but I do think that creativity is an essential part of any research or study. Just like art, academic study is the very act of seeing things from a unique perspective. As a country that spawned great scholars, authors and artists, I feel that UK is the perfect place to pursue a niche, focussed field of study. I didn’t know that when I came here at 18, but not I’m starting to enjoy that environment. For an international student, maybe it’s a place where you come back to study after you’ve had your fair share of working and traveling (and earning money for the tuition!).

でもそもそもイギリスに来たのは音楽活動のためなのでは?と言われそうだが、実は興味があるのは音楽と通訳の繋がりなのだ。両方ともライブなコミュニケーションで、音やリズム、時間も関係してくる。この繋がりを自分なりに研究していけたらと思っている。

However, the title of this blog is “How to survive as a Japanese artist in the UK”. The connection with my new found field of study and music is essential. My main interest is how interpreting relates to music; both are live communication involving sound and rhythm, also time…many things I have yet to discover within this topic.

 

 

 

 

 

Bring on the Student Discounts

今月から、ロンドンの大学院に通い始めた。この歳でまた学生になるのは不思議な感じだが、専攻している翻訳・通訳は、以前からずっと興味があった分野。
初めて英語に触れたのは小学生の時アメリカに住んでいた3年間で、覚えるのも早かった分、帰国後すぐに英語を忘れて行くことに小学生ながらに焦りを感じた。そこから独学で英語を勉強し続けてきたのだが、好きな音楽や映画を見ながらボキャブラリーを増やし、大学でまたロンドンに渡ったときには、イギリス英語という新しい壁にもぶつかった。話し方も使うフレーズもアメリカとは違い、言語の裏にある文化の大切さも痛感した。
自分の歌の歌詞も英語と日本語で書いてきたが、ずっと慣れ親しんできたと思っているこの二つの言語を掘り下げてみたい、と思いここで大学院に通うことを決めた。

I’ve started a Masters course at UCL this month. It feels strange to go back to school at this point in my life, but I have always been interested in the course that I enrolled in, which is Translation (with Interpreting). Having spent 3 years in America as a child, I was obsessed with English even after coming back to Japan, constantly learning new vocabularies through music and movies. When I went away to college in London, I found British English to be completely different from American English, and realized the importance of understanding the cultural background.

I have been writing songs in two languages, and grew a passion to pursue contextual study of these bilingual processing, which lead to the decision to enrol in this course.

私がこの1年間学ぶことになる UCL (ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン)は歴史のある大学で、幕末に長州藩から初めて日本人が学びにきた大学でもある。ここから明治維新の思想が学ばれたといっても過言ではないのかもしれない。当時は外国人を受け入れる大学は他になく、革新的な思想を持った大学だ。キャンパスの場所は大英博物館のすぐ裏にあり、立地は最高、設備も充実している。ニューヨークでいうNYUのようなマンモス校だが、それぞれの科目にはその分野のエキスパートの講師がいて、専攻もすごくマニアックなものがあるのがいかにもイギリスらしい。例えば通訳の授業が一緒のとある学生は、人類学の枠の中で翻訳・通訳家という職種の人間について研究しているという。

同じ専攻の学生は6〜7割が中国からの留学生で、他はロシア、ギリシャ、サウジアラビアなど。クラスが始まって一週間だが、いまだに日本人とは遭遇してない。けれども驚くほどに日本語の人気度が高い。中国人の学生さんたちはみんな日本のファッションが好きだというし、ギリシャ人の子は独学で日本語の会話ができるほどに勉強して来たという。日本語という言語が実はとても特殊で難しいということも、他の国から来た人たちと話していてつくづく思うことだ。

前に大学生だったのはもう10年前、しかもアート系だったので作品制作中心だったので、ちゃんとした講義に出るのも初めて。座っているだけなのにすごくお腹がすくし、決まった時間に決まった場所に行くという時間割にもまだ慣れないが、この時期に勉強ができるということが何よりも貴重な経験だ。この機会を最大に生かしたいと思っている。

Needless to say, UCL has prestigious history including welcoming Japanese students in the late 19th century which lead to the establishiment of the modern Japanese government system. I love how some of the majors are really specific and enthusiast of one of the most niche fields of study.

It’s a big shift from having studied Fine Art for undergraduate course, but I feel truly lucky to have this chance to study at this point in my life. There must be so much art in this field of study too, and am determined to make the most of this opportunity.