現地アーティストとのセッションPart2〜海を超えて成功を掴んだタフな一児のママ〜

アメリカ人のネル•ブライデンは、数年前まではニューヨークでウェイトレスをしていた。

彼女はそのとき、得体の知れない恐怖を抱えていたという。

『もし自分の夢に挑戦しなかったら、それを後で後悔することへの恐怖』

イギリスで音楽活動を始めたきっかけを聞くと、そう答えてくれた。

もちろん渡英後すぐに全て順調に行ったわけではなかったという。何時間もドライブして行き着いたギグで誰にも聴いてもらえなかったり、ツアーで泊まらせてもらった家で夜中に酔っぱらった家主の彼女に追い出されるなど、数多くの苦労を乗り越えてきたネル。彼女の風貌は、アニーレノックスばりのスキンヘッド。アルバム制作中にストレスで髪が全て抜けてしまったというが、イギリスに来てからの苦労もそれほど大きなものだったのだろう。そんな彼女も今ではBBC2という中年層向けのラジオ局での常連で、空前のカントリーブームのイギリスでは、彼女の良きアメリカンミュージックなサウンドがその層に人気だ。

そして彼女は半年前には長女を出産した。ご自宅を訪ねると、天使のような赤ちゃんを抱えて迎えてくれた。

ソングライティングセッションを始めると、隣の部屋でお義母さんと赤ちゃんとの笑い声が聴こえてきた。

自分の型を破るためにイギリスに来た自分にとって、彼女の曲のスタイルは少しオーソドックスだったが、そのソウルフルなストーリーを聞きながら曲作りを進めていく中で、沢山の優しいエネルギーをもらった。img_4169

現地ミュージシャンとのセッションPart.1~ビートメーカー~

音楽の化学反応は面白い。決まった公式もないから、どんなものができるか予想出来ない面白さがある

違うジャンルだからといって必ずしも合わないこともないので、可能性に制限を設けない柔軟な発想が大切だ。

こういった音楽のコラボでつくづく思うのが、最終的には『人』の相性だということ。

本当に単純に『いい人~』という人とはコラボが楽しい。

そして日本の音楽業界で観察してきても、レーベルのディレクターがまた仕事を頼みたいと思う人は、純粋に人柄の相性という場合が多いのだ。もちろん作品ありきだが、人柄を含めた姿勢、大切にしているもの、などは驚くほど素直に音に出るのだ。

昨年の10月、ロンドンでとあるプロデューサーと知り合う機会を得た。カセル•ザ•ビートメーカーという、ストリートカルチャーに身近なアーバンミュージックに関わっているドラマーで、名誉あるアワード、Ivor Novello Awardsも受賞したソングライターでもあるのだ。

ヒップホップノリの怖い人を想像していたのだが、実際に会ってみると真面目で物静かな姿勢だった。一緒にツアーしているというラッパーのスタジオを使わせてもらって、そこで2日間で3曲も一緒に曲を書き上げた。

ここで、共作ってどうやるの?

を少し説明する。大きく分けて2つある。

①一番オーソドックスなのは、ギターやピアノなどの楽器を前にして、コードやリフをポロポロ、でAメロ、Bメロ、サビ→じゃあDメロ何にする?という風にアイディア交換しながら歌謡曲のフォーマットに当てはめていく。もちろんフォーマットはあくまでもガイドなので、あえてフォーマットなんて崩していこうというのもアリだ。

②特に最近のダンスミュージックに多く見られるのが、トラック+メロディーの作り方。こちらの記事でも説明しているが、プロデューサがカラオケトラック(たいてい4コードの繰り返し、サビは盛り上がりを期待させるブレイクの後でAメロと同じコードでアレンジを大げさに盛り上げる)を作り、歌い手や他の作家が主メロ(トップラインともいう)をそれにつけていくという手法だ。

カセル氏との曲の共作作業はこの①と②を合わせたような方法で進んでいった。さすがドラマー、ビートとピアノのコードでトラックを作って用意してくれていたので、それにボーカルメロディーのアイディアを出していく。歌詞は、テーマを意識してメロディーと同時に作っていく。

ここでスタジオアシスタントのボブマリー的な男の子が遊びでラップをし出したので、それいいじゃん!ということで急きょラップ入りの曲にすることに。

ベーシストと一緒にDメロの展開も付け足していく。

完成したものは、自分の曲では今迄になかったような予想外のものができた。まさに違ったジャンルとのコラボの醍醐味だ。

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