超大御所マネージメントの事務所を訪ねてみる

世界でトップクラスのアーティストを担当し、彼に仕事を頼みたいときには家を買う程の予算が必要だという、某大御所音楽マネージャーに話を伺うことができた。知り合いのご紹介で連絡先を伺ったこの方。もちろん自分のマネージメントを探すのには身の程知らずなことは充分承知の上で、純粋に話を伺いたいと思って簡単な自己紹介のメールをしてみた。返事は期待していなかったのだが、予想外に、事務所に遊びにきたら、との返信をいただいた。
場所はマリルボーンの閑静な住宅・事務所街。標識もないフラットの扉を叩くと、ソーシャライトな雰囲気を醸し出すピンクの髪の女の子がドアを開けてくれた。こっちの事務所の受付女子はこういったイケイケのタイプが多い。
こじんまりしたそのマネージャーの個人オフィスに入ると、まずは同事務所の音楽弁護士を紹介される。また出た、弁護士!同じ部屋にぴったりと横にデスクを構えていることから、権利やお金を奪いにやってくる様々な手から守ってくれる番人のようだ。

大御所マネージャー氏は、雲の上の神が下界を穏やかに見下ろすような雰囲気があり、上から目線とも少し違った余裕が感じられた。自分の経歴を少し話し、イギリスでアーティストとして軌道に乗るまでには相当時間がかかると思うので、その間に音楽業界で経験を積める機会を探している、と話すと、その判断は賢い、と、以前弁護士が言ったような『色々時間とお金がかかる理由』を説明しなければならない手間を免れた、というようなほっとした表情で返事をくれた。

アーティストとして成功する近道はない。そして成功している人たちは決して手を差し伸べるようなことはしない。『有名になったら連絡してね』と言うだけだ。

とはいえ、ネット上どこからどんな火が付くか分らない今の時代だからこそ、次に何がヒットするかは長年業界にいるプロにさえも予想できない。唯一無二のアーティスト性、今迄聴いたこともない音楽、そんなものが求められている時代だからこそ、きっとこのマネージャー氏は私のような、イギリスで活動を始めたいと思っている日本人アーティストにも、忙しいスケジュールの中15分の時間を割いてくれたのだろう。

英語で、”Don’t put all eggs in one basket”というイディオムがある。

直訳すると『全部の卵を一つの籠に入れちゃだめ』。分り易い例だと分散投資、というところだろうか。

音楽活動においては、アドバイスを色々なところから聞いてみて、偏らずになるべく幅広い意見を集めること。今回も大変貴重な機会になった。

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