歌の解剖学

最近ハマっている本。

Anatomy of a Song

歌の解剖学、とでも訳せるこの本は、誰もが知っている数々の名曲がどのようにして作られたのか、作家やアーティスト、セッションミュージシャンへのインタビュー形式で綴られている。

それぞれ短編小説を読んでいるようなドラマがあって非常に興味深い。

Joni Mitchellが彼氏(Graham Nash、60年代から活躍していたフォーク歌手)と別れた直後、傷心旅行で行ったギリシャで出会った男性とのことを歌った”Carey”(そしてその後歴史に残る名作アルバム、Blueが発表されることになる)や、Janis Joplinが友人たちとダイナーで食事しながら作ったというMercedes Benz (この曲の正式なレコーディングを待たずに彼女はヘロインオーバードースで帰らぬ人となってしまった為、残っているテイクは他の曲のレコーディングの空き時間の鼻歌バージョン)、教会の活動資金を集める為にゴスペル歌手が作ったのがのちの大ヒットになった”Oh Happy Day”、ポップソング形式にとことん反発して作られたLed Zeppelinの”Whole Lotta Love”(でもシンプルなギターリフは色々な楽曲からインスパイアーされている)など。さらにそれらの曲の元ネタを検索することで、ポップソングの歴史の勉強にもなっている。

これらのストーリーを読んでいて、それぞれの名曲が生まれた背景には共通点があることに気づいた。

一つは、実は完全なオリジナリティというものは多くの場合存在せず、みんな何かしらの既存曲に影響を受けているということ。ギターリフなどの元ネタを調べてみると、ほんとだ同じじゃん、と若干がっかりすると同時に、インスピレーションは色々な所にあるんだなぁと希望も見えた。ポップソングの根っこをたどっていくと、ブルーズやゴスペルなど、アメリカの黒人ルーツ音楽の影響が濃い印象だ。

そして、作家本人はまさかヒットになるとは思わなかったという場合が多い。

スタジオでセッションしていく中で曲の軸になるようなイントロやリフが出来たり(スタンドバイミーのイントロなど)、アンプに寄りかかって偶然フィードバックを発見したり、テープのオーバーダビングで偶然いいかんじのディレイが出来たり、偶然の発見が多いというのも共通点だ。

サイエンスのように、 実験を繰り返していく中で、意図していないふとしたときに大発見があるのかもしれない。

 

 

現地ミュージシャンとのセッションPart.1~ビートメーカー~

音楽の化学反応は面白い。決まった公式もないから、どんなものができるか予想出来ない面白さがある

違うジャンルだからといって必ずしも合わないこともないので、可能性に制限を設けない柔軟な発想が大切だ。

こういった音楽のコラボでつくづく思うのが、最終的には『人』の相性だということ。

本当に単純に『いい人~』という人とはコラボが楽しい。

そして日本の音楽業界で観察してきても、レーベルのディレクターがまた仕事を頼みたいと思う人は、純粋に人柄の相性という場合が多いのだ。もちろん作品ありきだが、人柄を含めた姿勢、大切にしているもの、などは驚くほど素直に音に出るのだ。

昨年の10月、ロンドンでとあるプロデューサーと知り合う機会を得た。カセル•ザ•ビートメーカーという、ストリートカルチャーに身近なアーバンミュージックに関わっているドラマーで、名誉あるアワード、Ivor Novello Awardsも受賞したソングライターでもあるのだ。

ヒップホップノリの怖い人を想像していたのだが、実際に会ってみると真面目で物静かな姿勢だった。一緒にツアーしているというラッパーのスタジオを使わせてもらって、そこで2日間で3曲も一緒に曲を書き上げた。

ここで、共作ってどうやるの?

を少し説明する。大きく分けて2つある。

①一番オーソドックスなのは、ギターやピアノなどの楽器を前にして、コードやリフをポロポロ、でAメロ、Bメロ、サビ→じゃあDメロ何にする?という風にアイディア交換しながら歌謡曲のフォーマットに当てはめていく。もちろんフォーマットはあくまでもガイドなので、あえてフォーマットなんて崩していこうというのもアリだ。

②特に最近のダンスミュージックに多く見られるのが、トラック+メロディーの作り方。こちらの記事でも説明しているが、プロデューサがカラオケトラック(たいてい4コードの繰り返し、サビは盛り上がりを期待させるブレイクの後でAメロと同じコードでアレンジを大げさに盛り上げる)を作り、歌い手や他の作家が主メロ(トップラインともいう)をそれにつけていくという手法だ。

カセル氏との曲の共作作業はこの①と②を合わせたような方法で進んでいった。さすがドラマー、ビートとピアノのコードでトラックを作って用意してくれていたので、それにボーカルメロディーのアイディアを出していく。歌詞は、テーマを意識してメロディーと同時に作っていく。

ここでスタジオアシスタントのボブマリー的な男の子が遊びでラップをし出したので、それいいじゃん!ということで急きょラップ入りの曲にすることに。

ベーシストと一緒にDメロの展開も付け足していく。

完成したものは、自分の曲では今迄になかったような予想外のものができた。まさに違ったジャンルとのコラボの醍醐味だ。

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