歴史と気品溢れるスタジオ

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そのスタジオは、ロンドン北部の閑静な住宅街にあった。

イギリスの家は、築30年で若い方。300歳にもなる老舗物件がゴロゴロあり、それぞれの歴史と伝統を物語る。

この家は、エドワーディアン時代(1900年〜1910年頃)のスタイルを誇る、高い天井、大きな窓と木造の美しい建物。代々受け継がれて来たというこの家は、クラシック音楽好きの家主によって音楽スタジオとして貸し出されている。

リハーサル、撮影、レコーディング、ライブまで、幅広く使える施設として、ミュージシャンたちに愛されている様子が家の端々から伝わって来た。

フルコンサイズのグランドピアノからは、重厚な音が鳴る。普段キーボードで練習しているので、久々に生ピアノを触る。

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今回は、リリース予定のEPの楽曲達をピアノ弾き語りで録音するという撮影だった。カメラアングルを何パターンか変えて、3曲の曲たちを何度か録音していく。

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だんだんと感情移入していく中で、このピアノと空間に溶け込んでいけるような、贅沢な時間だった。こんな場所をリハスタとして使えるなんて、やっぱりロンドンは最高だ。

MV制作 Part3~St.Martin-in-the-Fields~

このミュージックビデオの撮影チームは兄弟による映像会社だ。
なんと5人の男兄弟だというマン・ブラザーズというチームは、イギリスに来て依頼お世話になっている、某日本人ギタリストのマネージャーA氏に紹介していただいた。
打ち合わせでは、曲のコンセプトを丁寧に紐解いてくれて、それにピッタリのアイディアを次々と出してくれた。
この曲は、実はロンドンに対する複雑な心境が込められている。
イギリスでの音楽活動という目的、その前に立ちふさがる障害物はたった一つ、自分の自信の揺らぎだ。
その自信を揺るがせるものも一つしかない、それは他人からの否定的な意見だ。
このブログでも以前書いた記事に、弁護士から言われた、『出来ない理由』。
この歌は、そんな意見に対抗する歌。

そんなことをチームに話すと、それらのコンセプトを、ダンサーの動きを通して表現することを提案してくれた。
二人のダンサーが、そういった『障害物』を表現する振り付けで私の両脇から出て来る。
その中を、揺るぎない自信を持つ表情で進んでいくことで、歌のテーマである芯の強さを表現するというものだ。

すぐに、撮影にちょうどいいスタジオを見つけてくれて、スケジュールも決まった。
スタジオは、白い壁と高い天井ながらも、決して無機質ではなく、木の床がいい味を出している。

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振り付け師と二人のダンサーは、念入りにコンセプトに沿った振り付けを考えてくれて、テイク数も最小限に順調に撮影が進んだ。
ウエストエンドでのミュージカルにも出ているというダンサーたち。
イギリスではやはりパフォーミングアーツに対する環境も良く、こういった素晴らしいダンサーがすぐに見つかるのもロンドンならではなのではないだろうか。

mb_riefu9mb_riefu12そして驚いたのは、兄弟のチームワーク。映像の制作現場では、撮影よりもセッティングの方がはるかに時間がかかるもので、チーム内での効率の良いコミュニケーションが重要になってくるが、
さすが血のつながった兄弟、まさに阿吽の呼吸で撮影が進んでいった。

兄弟喧嘩はしないの?と聞くと、そこもプロ意識を持って、クライアントがいないときにこっそりと喧嘩することもあるよ、と話してくれた。
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MV制作 Part2~Business Trips~

このMVは、シンガポールで行った。撮影時はまだシンガポールに住んでいたので、現地のクリエイターとのコラボの機会を探していたのだ。

ちょうどそんなときに、現地の名門美大、ラサールの映像科の卒業制作の発表会に行く機会があり、そこで観た作品たちのクオリティの高さに驚いた。

この学校は、イギリスのThe Puttman Schoolという映像学校と提携を結んでいるため、イギリスが誇る高い映像科教育の恩恵も受けている。

そのとき見た作品では、エリート志向のシンガポールの中での社会的弱者やアンダーグラウンドな世界をテーマにしたドキュメンタリーが印象的で、

どれもコンセプトが面白く、シネマトグラフフィーもプロフェッショナル顔負けのクオリティーだった。

ラサールの先生に紹介していただき、最近卒業してプロダクションを設立したTanglin Filmsに制作を依頼した。

彼らは現役の学生からの信頼もあつく、ボランティアを募ると15人近くの学生さんたちが協力してくれて、大学にある撮影スタジオに、3日間ほぼ徹夜でベニヤ板やダンボールで大掛かりなステージセットを作ってくれた。

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プロのプロダクション会社でもこの手際の良さには敵わないのではないだろうか、とういぐらい頼もしい学生さんたち。風格もこの通り!

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日本でも10本以上ミュージックビデオの撮影現場を目の当たりにしてきたが、こんなに活気のある現場は初めてだった。

そして黙々と作業していた学生さんの一人が、撮影終了後に、私の音楽をずっと聴いていてくれたと話してくれて、サインを求めてくれたのが嬉しかった。

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この撮影中は、普段関わる事がなかった現地の学生さんたちとの貴重な交流の機会にもなった。

完成した作品のクオリティーも素晴らしいものだった。

日本からシンガポールへ、そこで出会った人たちのアイディアと力で、海を渡ってイギリスで発表できる作品になったことに感激だ。